旋盤による金型部品加工の基礎知識
旋盤加工とは
旋盤加工とは、工作機械の一種である旋盤を用いて、回転するワーク(加工物)に刃物を押し当てて切削する加工方法です。主に円筒形や円錐形、ネジ山など、回転体形状の部品を製作する際に用いられます。旋盤は、古くから金属加工の分野で活躍しており、現在でも様々な産業で必要不可欠な加工技術です。旋盤加工の代表的な工程としては、以下のものが挙げられます。
外径旋削
ワークの外周を削り、円筒形や円錐形に加工する。
内径旋削
ワークの内側を削り、穴や曲面形状を加工する。
突切り
ワークを軸方向に切断する。
ねじ切り
ワークにネジ山を加工する。
テーパ加工
円錐形の形状を加工する。
面削り
ワークの端面を平らに加工する。
金型部品に加工精度が求められる理由
金型部品に高い加工精度が求められる理由は、下記の点が挙げられます。
製品の寸法精度
金型の精度が低いと、成形される製品の寸法にバラつきが生じ、不良品が発生する可能性が高くなります。
製品の外観品質
金型の表面に傷や凹凸があると、製品にも同様の欠陥が転写され、外観品質が低下します。
金型の耐久性
金型部品の精度が低いと、部品同士の隙間や干渉が生じ、摩耗や破損が早まる可能性があります。
組立性
金型部品の精度が低いと、組み立てが困難になったり、部品同士の隙間からバリが発生したりする可能性があります。上記のような問題を避けるため、金型部品の加工には高い精度が要求されます。
マシニングセンタと旋盤加工の使い分け
マシニングセンタと旋盤は、どちらも金属加工に用いられる工作機械ですが、それぞれ得意とする加工形状や特徴が異なります。金型部品の加工においては、部品の形状や要求される精度に応じて、マシニングセンタと旋盤を使い分けることが重要です。
マシニングセンタは、3軸以上の移動軸を持つ工作機械で、複雑な形状の部品を加工することができます。フライス加工や穴あけ加工、彫刻加工など、多様な加工に対応できる点が特徴です。金型部品においては、複雑な形状のキャビティやコア、入子などの加工に適しています。
旋盤は、回転するワークを加工する工作機械で、円筒形や円錐形、ネジ山など、回転体形状の部品加工に特化しています。金型部品においては、円柱状のピンやブッシュ、ノズルなどの加工に適しています。
加工方法の使い分け
部分的な形状の加工
マシニングセンタは、エンドミルと呼ばれる刃物を用いることで、ワークの任意の位置に三次元形状や溝を加工することができます。一方、旋盤では、回転するワークに対して刃物を固定するため、径方向に全周に刃具が接触します。 よって部分的な形状加工はできません。(※ワーク側面や内径面の一部分にのみ形状を付ける加工は不可)
芯円の出しやすさ
旋盤は、ワークを回転させて加工するため、芯円が出しやすく、高い真円度を得ることができます。一方、マシニングセンタでは、ワークを固定し刃物を移動させるため、芯円を出すのが難しく、旋盤に比べて真円度が劣る傾向があります。
丸物のワーク
旋盤は、丸物のワークの加工に最適です。円筒形や円錐形など、回転体形状の部品を効率的に加工することができます。一方、マシニングセンタでは、丸物の加工をする際、加工軸をx、yの移動データで円を描くように加工する為、旋盤と比較し加工工数と精度が落ちる傾向があります。
蛇腹形状の加工
NC旋盤と呼ばれる、数値データ(加工プログラム)を使用し加工する機能を持つ工作機械を用いることで、製品モデル形状に合わせた蛇腹形状のような複雑な形状の加工も可能です。これは、旋盤の回転加工と加工プログラムによる自由な工具移動を組み合わせることで実現されます。一方、従来の旋盤加工機では、製品モデル通りの蛇腹形状加工は非常に困難です。
径がいびつな形状の加工
旋盤は、回転するワークを加工するため、径がいびつな形状(楕円形状など)の加工はできません。このような形状の加工には、マシニングセンタが適しています。金型部品の加工においては、上記のようなマシニングセンタと旋盤の特徴を理解し、部品の形状や要求される精度に応じて最適な加工方法を選択することが重要です。
旋盤加工の利点を活用した金型製作事例
この蛇腹形状の金型は、マシニングセンタを用いた加工でも製作可能でしたが、加工精度・コストを考慮して蛇腹部を入子化、その後旋盤加工機にて蛇腹形状を彫り込んで製作しました。
参考金型モデルである朱色蛇腹形状部を入子化し、NC旋盤加工機での内径加工にて形状加工を実施することで、円周形状を高速回転で加工可能なため、加工工数の削減・形状精度の向上を実現しました。
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金型の設計・製作は当社にお任せください。
本記事では、旋盤による金型部品加工の基礎知識についてご紹介しました。金型くん!メンテ改造ラボを運営する扶桑精工では、社内にて高い設計標準を設定しているため、高品質な金型製作を実現を可能にしています。デンソー様を始めとした大手自動車部品メーカーの設計標準の品質も確保しており、寸法精度が高く、バリが発生しないなど高品質・長寿命な金型をお届けすることが可能です。
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